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20話 失われたもの、戻らない者

Auteur: ニゲル
last update Dernière mise à jour: 2025-04-29 08:55:32

「リンカル……そこを退け!! そいつにキュアヒーローとしての資格なんてない。アタイが倒してそのブローチを叩き壊してやる……!!」

「全く君は相変わらず荒々しいね。そんな性格で人助けは向いてないよ。君こそそのブローチをリンカルに返却してキュアヒーローを降りたまえ」

リンカルと呼ばれたハムスター? のような見た目のキュア星人が止めようとするものの二人とも聞く耳を持たない。

「お前ら何やってるんだ!! キュアヒーローの力を行使したイクテュス以外への攻撃行為は許されていないぞ!!」

そこにキュアリンも来て二人を説得する。理論を加えることにより二人もとりあえずは力を解き殺意を抑える。

「ねぇ……二人ともどうしたの!? 配信ではあんなヒーローしてたのに、何でキュアヒーロー同士で……私達はみんなの笑顔を守るヒーローじゃないの!?」

ノーブルはバツが悪そうに視線をこちらから逸らす。だが対照的にアナテマは私を睨みつけ先程ノーブルに放っていたものを私に向ける。

「ふざけるな……何が正義ヒーローだ……!! キュアヒーローはそんな希望の力じゃない……こんなの人を狂わす呪いの力だ!!」

アナテマは胸にあるブローチを強く握り締める。そして私の方に近づいてきて胸元に、ブローチの方に手を伸ばす。

「ちょっ……何するのやめてよ!!」

私は咄嗟に後ろに下がりブローチを守る。彼女は目に見えて不機嫌になるが後ろからノーブルが睨みつけ牽制する。

「お前らなんかがこの力を使えこなせるもんか。死にたくないならとっととこんなこと辞めて日常に戻るんだな」

アナテマは捨て台詞を吐き闇に溶けて消えていく。

「はぁ……アナテマ……いや神奈子は相変わらずだな」

「えっ……神奈子って、もしかしてあの健橋神奈子!?」

「いやいやそんなまさか。かなこって名前は一般的だし同音の別人よきっと」

「君達……健橋神奈子を知っているのか!?」

しかしノーブルの反応はまさかのもので、変身を解除しつつ、桐崎橙子の姿へと変わって私達の方に駆け寄る。

「えっ……橙子さん!?」

「ん……? そうだが君達は?」

「私達です! 今日下校する時に会った……」

私達も変身を解いて素性を晒す。これには橙子さんも飄々とした表情を崩す。

「いいのかリンカル? 私生活に無駄に関わらせて?」

「彼女達
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